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Oyatsu Aoiさん、Sugar & Wheatさんインタビュー(後編)


【ビジネスの難しさとやりがいーーー】


お:こちらでビジネスする中で特に難しいと感じるところはありますか?

SW:全て自分一人でやっているので、とにかく時間が足りないですね。

「コテージロー(※)」という法律に則って販売しているので、守らなければならない決まりも多くて、アレルギー表示や製造内容を記載したステッカーを用意して、個別に包装・梱包も必要で、作ってから売るまでにかなりの手間がかかります。

(※Cottage Food Law: 家庭で食品を製造・販売するための法律)


それに加えてインスタグラムで宣伝もしないといけない。お客様とのやりとりも全て1人でやらなきゃならない。需要があるのはすごく嬉しいのですが、本当に時間が足りなくて、なかなか販売の量を増やして行くことができない。しかも、ストックができないので、例えば当日急に「100個お願いします」と言われたとしても対応が出来ないんです。規模を広げて人を雇うことも考えましたが、今のやり方とはかなり変わってしまう。

もっとたくさんの人に知ってもらいたいし、広めていきたいけれど、どうしても今が限界。個人でやっているからこそのジレンマや難しさがありますね。

それと、やはり売れ残りを出したくないのですが、予測がとても難しい。曜日によってお客さんの層が違うのでそれに合わせて用意するんですが、意外とそこまで売れないこともあったり。たくさん作ったとしても、お客さんのニーズがなかったら売れないですしね。


OA:気候や前週の売れ行き、予約の状態をデータベース化して量を調整するんですが、それでも売れ残ってしまう日もあれば、反対に一瞬で売れてしまうくらいお客さんが多かったり、それくらい波があります。店舗がないから余った分を次の日に回すことはできない。でも早く売り切れてしまっても、「いつも買えない」って印象がついてしまう。


SW:あとは暑さ、寒さですね。スペースの関係上、屋外の販売になるので。特に夏は商品が傷みやすい。


OA:夏は早く売り切りたいので売る量を減らさなければならない。冬場は11時にしてる開始時間も、夏場は暑すぎるので10時オープンにする。でも、そうすると少し早いと感じられるお客さんもいて、夏場は特に苦戦しています。



お:それでは最後に、やっててよかったと思ったことと、これからの展望を教えてください。

OA:自分としては、アメリカ人向けにしたりして自分が下手に出るということはなく、ただ自分が美味しいと思えるものをこっちで手に入る材料で作っているので、初めて和菓子を食べるローカルの人たちの反応が良かった時は、文化がちゃんと伝わってる、同じ美味しさを日米で対等に共有できていると思えて、やっててよかったなと思います。

でも、まだまだ知られていない。もっと広げていきたい。もっと人の目に留まらなきゃいけない。ものが溢れている世の中なので、興味がある人に私がやっている活動が繋がって出会えるようにできたらと思います。


SW:私のコンセプトは「安心・安全な日本のパンをヒューストンで」なんです。小麦を麦から挽いてます!とかではないんですけど、良いランクの小麦を使ったり、お塩やお砂糖は天然のものを使って、使用量も最小限で美味しさを保てるレベルを追求しています。そのおかげもあって、心臓の病気がある方や血圧や血糖値が上がりやすいなどの疾患を持ってる方から、私のパンを食べると「血圧や血糖値が上がらない」と今まで本当に何人ものお客さんに言ってもらっています。あとは、「Sugar & Wheatのパンを食べてみたけど、アレルギー反応がでなかったよ」と言っていただいたことがあります。そのお客様はもしかしたら、小麦ではなく、小麦に含まれる添加物にアレルギー反応を起こされていて、添加物なしの手作りのものだから、食べられたのかもしれませんね。


お:無添加の素材を使用することを大切にしているんですね。日本人の方は無添加を好まれそうですよね。


SW:そうですね。でも、最初はオーガニック目的で買ってくれている日本人の方も多かったんですけど、最近はローカルの人の方が、天然素材やオーガニックへの意識が高まっている気がします。

あとは重い障害を抱えているお子さんで、固形物が食べられなかったけれど、ここのパンを初めて食べて、固形物が食べられるようになったというお声もいただいています。そう言ってもらえると本当に嬉しいですね。体に優しくてヘルシー、そこにこだわっています。

いつもこのコンセプトは前面に出しているつもりなんですけど、伝わってないな、と感じることも多いです。


OA:古き良き日本では、いいものを作りさえすれば、喋らずとも待っているだけで見つけてもらえるというところがあったのかもしれない。なので、商品自体は良いものなのに、営業があまり上手ではない、というのは日本人がビジネスする上でよくあることだと思います。ですが、今はちゃんと伝えなきゃいけない、言葉を乗せていかなきゃいけないっていうのをすごく感じています。


お:現在、お二人の宣伝媒体のメインはインスタグラムですよね。それについて難しさというのはありますか?

SW:難しいです。でも、やらないといけない。やり続けないと。

そういえばこの前こちらのインフルエンサーの方が来てインスタグラムに載せてくれたんですよね。ヒューストンでフードの投稿が一番有名な人で、そうしたら一ヶ月ぐらいずっと、もう考えられないぐらいの人が来て行列ができて、それが何週間か続いたんです。


お:すごい!だけどそれはずっと続くものではないですよね。


SW:商品を多めに作っても足りなくて、半分以上の人に行き渡らなかった。混んでるなら行くのやめようってなって、徐々に落ち着いていきました。だから一気にバズるのも問題なんですよね。どうやったら上手く伝わるのか、コンスタントにお客さんが来るようになるのか、マーケティングと営業力、それが欲しいですね。


お:例えばサブスクみたいなのはどうですか。毎月定額で、月に何回かお届けします、みたいな。季節のお菓子も入れて。


OA:それもいいですよね。お菓子は、毎日絶対食べるものではないけれど、月何回か食べたくなるようなものなので、その形が取り入れられたらいいですね。


お:それなら安定して提供できるし、需要も読めますよね。もっと食べたかったらポップアップでも買えますよ、と言えたり。


SW:そうなんです。それはずっとやりたいと思ってて…。

でも、ずっと毎週の業務に追われて、仕込みも自分だし、買い物も自分だし、ちょっと買い出しに行くだけでも時間はかかるし、それでいて普通に主婦もやる。夫が出張ならワンオペ。家の冷蔵庫は材料でパンパン。そうこうしているうちに、あっという間に1週間。


OA:色々考えることがあって頭が痛いです(笑)


SW:今は今で、お客さんがついてるので現状に甘んじてしまっている部分もありますね。もっと頑張らないと、とは思っているんですが、これ以上仕事すると家族に迷惑がかかる、子供にしわ寄せがいく、という限界ラインのギリギリなんです。少しでも忙しい週になると晩御飯を作れなかったりして、家族に申し訳ない。そしてそれが続くと、家族から、もう休めばと言われることもあります。家族は私の活動に対して批判的なわけではなくて、どちらかというと、疲れているのではないかと心配させてしまう。ボロボロになりながらの活動だと迷惑も心配もかけてしまうから、そうならないところで調整しながら働いている。

正直、自分一人の生活だったら思いっきり活動できるのに、と思う時はあります。


お:お迎えの時間を気にせずに。子供の体調の不安もなく。


SW:子供の行事も多いので、隙間を縫って時間を作らなきゃならないですし。アメリカでは子供が小学生になると、親はそれまで以上に忙しくなる。小学生になると学校や習い事のお迎えがあるので、親の送迎人生が始まります。小学生から高校生まで続く。そして家に子供一人で置いておけないので、連れまわすことにもなる。送迎中や習い事の待ち時間に出来る仕事ならいいんですけど、そうではない。自宅の普通のキッチンで作っているので。働くお母さん問題は日本にもアメリカにもありますよね。ビジネスをするには、とても大きな壁だと思います。


お:わかります。日本で子育てしながら働いていた時、何度辞めようかと思ったか。でも、それでも頑張っていけるというのは、やっぱりすごくやりがいがあるってことですよね。


SW:もちろん。働くだけじゃなくて、自分がやりたいことを仕事にできているっていう幸せもあるし、お客さんに喜んでもらえるっていう幸せもあるし、だから、やめようとは思わないし、できればもっと広げたいと思う。


OA:可能性を感じるんですよね。全然売れなくて、誰にも振り向いてもらえないようなら、もういいや辞めよう、ともなりますが、そうではない。アメリカに来る前は、周りから「アメリカ人は甘い豆なんか食べないよ」と言われたりもして、ネガティブなイメージもあったんですが、実際に販売してみたら、こんなに食べてくれるんだ、と驚きました。日本文化に対してウェルカムな方が多いんです。こちらで出会う人みんな、本心は別として、日本食好きだよ、日本行きたいよ、と言ってくれるぐらい。そのくらい日本や日本の食文化の印象がいいんです。仮に全く見たことのない和菓子を出したとしても、日本の新しい商品だから美味しいだろう、安全だろう、という視点で見てくれる。日本ブランドが強い今の状況は、追い風です。今、寿司・ラーメン以外の日本食のブームが来ているので、それがセカンドブームだとしたら、サードブームぐらいに和菓子が流行ってもおかしくないんじゃない?と期待しています。なのでこれから大事なのはやはり発信。まだまだ知ってもらう余地がある。伝えていくことが、やはり大事だと改めて思いました。


SW:マーケティングや営業部がどの会社にもあるように、どう広めていくかが大事ですね。



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この後も日々をマルチタスクで進めていく大変さ、子育ての悩みなどを話して大いに盛り上がり、あっという間に時間がたってしまいました。


Oyatsu AoiさんとSugar & Wheatさん、これからもご活躍を応援しております。

ポップアップなどの最新の情報はお二人のInstagramをチェックしてみてくださいね!


Oyatsu Aoiさんインスタグラム(https://www.instagram.com/oyatsu.aoi_us/)

Sugar & Wheatさんインスタグラム(https://www.instagram.com/sugarandwheat/)


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